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教室紹介

日本大学病院(駿河台)の特色

  • 日本大学病院

    写真1:明治通りから見た新病院全景

    (正面が患者さん専用の出入り口)

旧駿河台日本大学病院は昭和38年5月に竣工された病院で、JR御茶ノ水駅から約5分と、通勤、通院にも非常に至便な場所にありました。しかしながら、平成26年の時点ですでに築51年と約半世紀を経過しており、病院の老朽化、狭さは顕著でした。そのため、その数年前より新病院の建設が計画され、お茶の水通り沿いの現在の地における建設が開始されました。そして、平成26年9月下旬に竣工し、約2週間かけて新病院に移転し、10月に開院(写真1)となりました。

 

新病院の名称は「日本大学病院」と改められました。病院は11階建て、病床数320床と旧駿河台日本大学病院より病床数は多少減りましたが、手術室は8室(写真2)となり旧駿河台日本大学病院の時よりも2室増えました。この中央手術室で年間約5000件の手術が行われています。そのうち麻酔科管理症例数は3000件弱で、年により若干の差はあるものの旧駿河台日本大学病院の時よりも600~800件ほど増加しました。

写真2:中央手術室入口と各手術室

    • 中央手術室入口

    中央手術室入口

    • 第1手術室(ハイブリッド手術室)

    第1手術室(ハイブリッド手術室)

    • 第2手術室

    第2手術室

    • 第3手術室

    第3手術室

    • 第4手術室

    第4手術室

    • 第5手術室

    第5手術室

    • 第6手術室

    第6手術室

    • 第7手術室

    第7手術室

    • 第8手術室

    第8手術室

第1手術室では主に心臓血管外科の手術が行われていますが、この手術室はハイブリッド手術室です。そのため心臓血管外科手術以外にもX線透視下にステントグラフト内挿術、TAVIなどが行われています。

第2、第6手術室は腹腔鏡下手術、内視鏡下手術に特化した手術室ですが、これ以外の手術も実施可能です。この2室にはシーリングペンダントが設置されています。すなわち、医用電源、医療ガス、各種情報ジャック、腹腔鏡、内視鏡に使用される機器などは天井懸垂式アームシステムに組み込まれており、このアームの旋回機能、昇降機能により任意の位置に上記機器を設置することが可能です。

第3手術室はバイオクリーンルームで、人工関節置換術、脊椎手術などが主に行われています。第4、第5手術室は心臓血管外科以外の手術がおこなわれています。

なお、第7、第8手術室は眼科その他の診療科の局所麻酔を行うことを想定した手術室であるため他の手術室に比べ小さいですが、全身麻酔をおこなうことは可能です。

1:腹腔鏡下、内視鏡下の手術が多いこと

当院の手術の特徴は通常の開腹による外科手術に加え、内視鏡による手術が非常に多いことです。胃切除術、大腸切除術、胆のう摘出術などはほとんどの症例で腹腔鏡下に行われています。また、婦人科領域の子宮全摘術手術、卵巣腫瘍摘出術なども腹腔鏡下に、整形外科の関節の手術、泌尿器科手術、耳鼻咽喉科の副鼻腔の手術も内視鏡下に行われる頻度は高いです。また、最近では内科における胃がん、食道がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection: ESD)の症例も増えてきています。

すなわち、通常の開腹手術に対する麻酔管理に加え、腹腔鏡下手術、内視鏡下手術に対する麻酔技術、知識も習得することができます。

2:整形外科の症例が多いこと

スポーツによる肩、膝、肘の障害に対する内視鏡手術、人工関節手術、脊椎手術、骨折に対する観血的整復固定術など整形外科手術が多いのが特徴です。これらの手術に対する麻酔方法は症例により異なりますが、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、全身麻酔などで行われます。四肢末梢の手術に対してはエコー下に腕神経叢ブロック、大腿神経ブロック、坐骨神経ブロックを行っており、エコー下の神経ブロックのも習熟も可能です。

3:心臓血管外科手術について

心臓弁膜症に対する開心術、CABGはもちろんのこと、大血管の手術症例(解性性大動脈瘤に対する人工血管置換術)も豊富です。前述したように当院手術室にはハイブリッド手術室があるため、腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術も盛んに行われています。

4:経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic ValveImplantation:TAVI)について

旧駿河台日本大学時代に新病院の建設が開始されてから、TAVIチームが結成されました。そしてTAVI チームのミーティングが数十回にわたって行われ綿密な計画のもと、2017年4月に大動脈弁狭窄症に対する第一例目のTAVIが行われました。現在も月1~2症例の割合で行われています。

まとめ

病院自体がコンパクトで、手術室自体も非常にコンパクトにまとまっており、旧駿河台日本大学病院の時代と同様に麻酔科医、外科医、看護師のチームワークが非常によく保たれていることは、この新病院にも引き継がれていいます。麻酔科研修医の教育についても、麻酔指導医、専門医による教育体制を充実させるべく指導医一同気持ちを新たに頑張っております。一例一例の周術期管理を丁寧にかつ細心の注意を払って行うこと、このことは旧駿河台日本大学病院からの麻酔科教育の基本姿勢であり日本大学病院にも引き継がれています。

外来診療体制

日本大学病院ではペインクリニックを標榜し、痛みの治療を行っています。ペインクリニックは総合診療センターに属し、その診察室、ブロックを行う処置室は2階にあります。旧駿河台病院時代は月曜から土曜までの6日間外来診療を行っていましたが、新病院に移ってから当初は月曜日から金曜日までの5日間、ペインクリニック診療を行い、土曜日の外来は麻酔前診察を行うことになりました。しかしながら、手術件数の増加に伴い麻酔科医を確保するべく、月、水のペインクリニック外来を閉鎖し、火曜日、木曜日、金曜日の週3回の外来診療を行う体制になりました。診察室は2室あり、処置室には4台の処置台があり、神経ブロック後のバイタイルサインをチェックするための生体監視装置も完備しております(写真3)。

写真3:ペインクリニック外来

    • ペインクリニック診察室

    ペインクリニック診察室

    • ペインクリニック処置室

    ペインクリニック処置室

患者数

平成29年1月から12月までの新患患者数は67名(男性33名、女性34名)、延べ再来患者数は6249名(男性 2296名、女性3953名)でした。

ペインクリニックで治療対象となる痛み

院内各診療科、他施設から紹介されて受診することもあれば、紹介状を持たずに患者さん自身が希望して受診する場合もあります。

当科で対応する痛みの種類としては急性痛(帯状疱疹、腰椎捻挫、頸椎捻挫、筋筋膜性疼痛、腰椎椎間板ヘルニアなど)から慢性痛(変形性頸椎症、変形性腰痛症、帯状疱疹後神経痛、CRPS、変形性関節症、がん性疼痛など)までさまざまな痛みの治療を行っています。また、痛みを起こす疾患ではありませんが、星状神経節ブロックの適応となるため、顔面神経麻痺、突発性難聴などの症例も当科の治療対象になります。

ペインクリニックにおける治療方法

1.神経ブロック

ペインクリニックによる治療というと真っ先に神経ブロックが頭に浮かぶことと思います。神経ブロックの種類として星状神経節ブロック、硬膜外ブロック(頸部、胸部、腰部、仙骨)、肋間神経ブロック、後頭神経ブロック、三叉神経ブロックなど多種類の神経ブロックあります。また、最近では超音波エコーを併用した神経ブロック(腕神経叢ブロック、坐骨神経ブロックなど)が行われるようになりました。超音波エコーを用いることにより安全な神経ブロック、より確実な効果を発揮する神経ブロックを行うことが可能になりました。また、神経ブロックではありませんが、筋筋膜性疼痛症の症例にはトリガーポイント注射が効果を発揮します。

神経ブロックの手技には比較的容易に行える神経ブロック、高度のテクニックを要する神経ブロックがありますが、経験年数に応じてやさしい神経ブロックから徐々に難しい神経ブロックへと技術を習得していくことになります。

2.神経ブロック以外の治療手段(薬物療法を除く)

最近の高齢化社会に伴い合併症、抗凝固療法、抗血小板療法などを行っている症例も多く、神経ブロックの適応にならない症例を経験する機会が多くなりました。このような症例に対しては非侵襲的な治療として低反応レベルレーザー治療、直線偏光近赤外線治療、キセノン光治療、低周波治療であるSSP療法などの低侵襲治療が選択行われています。

3.各種薬物療法

上記治療と並行して非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗うつ薬、筋弛緩薬、抗痙攣薬、医療用麻薬、漢方薬などの各種薬物を用いた薬物療法がほとんどの症例で併用されています。

4.心理テストの施行

痛みが長期間続くことにより心的ストレスが加わり、このストレスが痛みを増幅する場合もあります。問診で患者がこのようなストレスを受けている可能性が見受けられた場合には適宜心理テスト行い、うつ状態、不安の程度、身体的・精神的自覚症状の把握に努め、必要に応じてペインクリニックでの治療と並行して心療内科、精神神経科における治療を進めていく場合もあります。

ペインクリニック専門医の取得について

当院ペインクリニックはペインクリニック学会の指定研修施設に指定されています。臨床医として6年以上の経験があり、規定の期間(日本専門医制評価・認定機構基本領域の専門医の資格を有しているかにより異なります)を指定研修施設で研修し、それに加え日本ペインクリニック学会入会年数、学会出席、学会発表、論文作成などの条件が満たされれば、ペインクリニック専門医試験の受験資格が得られます。

おわりに

痛みを我慢するとその痛みはますます強くなっていきます。痛みで悩んでいる患者さんは非常に多いです。厚生労働省によれば腰痛を抱える患者は2800万人いるとされています。高齢化に伴い腰痛を含め痛みを持っている患者さんの数はますます増加することが推測されます。患者さんの痛みを信じて、その痛み除去するためにペインクリニックの知識、技術を持って治療することは多くの患者さんの福音になることを信じています。