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教室紹介

臨床

麻酔は生体に対する様々な侵襲に立ち向かい、その生体を安全に管理するという学問です。すなわち、心・循環器・呼吸器機能、体液・代謝の管理を臨床の最前線で行う分野で、どのような臨床分野に進むにしろ、患者の命、生体を扱う医師にとって、必須の分野のひとつと考えています。

 

板橋病院の特色

 

日本大学病院の特色

  • 日本大学医学部麻酔科

麻酔をする際のモニタリングは著しく進歩しました。麻酔薬は性別、年齢、また同じ年齢でも人によって効き方がまったく違うため、使う加減が重要になります。昔はカンと経験から判断していましたが、今はどんな薬に対してもモニターを使い、それを観察しながら追加投与したりするので、個人差に対応できるようになっています。

ただ、モニターありきになることはよくありません。患者さんを診て、それにプラスしてのモニターです。やはり患者さんに体を向け、モニターは音、リズムで聴き、ときに横目で見るのが基本。まずは患者さんに触れ、診る、というのが大事です。

短期間で病状を把握し、患者さんと向き合う

  • 日本大学医学部麻酔科

普通、医師は主治医として患者さんをずっと診ていきますが、麻酔科医と患者さんのつき合いはとても短いです。たとえば、手術前日に入院してきた患者さんと、10分あまりの間、お話し診察させていただく中で、既往歴、現症、検査データなどを瞬時のうちに把握して、患者さんのリスクを挙げて翌日の麻酔の計画を立てます。どんな薬を使うのか、どんな麻酔にするのか、いかに合併症を起こさないかなどを判断します。短いタイムスパンの中で、主治医が手術しやすく、また麻酔中、患者さんに問題が起きないように、手術後のことまでを含めすべて考え、計画して運営するのが麻酔科医の役割です。

患者さんの麻酔に関して、全責任を担う

  • 日本大学医学部麻酔科

日本大学医学部附属板橋病院は手術室が14室、日本大学病院は8室あり、年間の手術は1万件を優に超えます。麻酔科医は手術でいかにスムースに麻酔管理をするかが大事ですが、もちろん、患者さんの安全を最優先に考えて行います。

最近は高齢化で、手術を受ける年齢層が上がっています。昔は80代の患者さんの手術はほとんどありませんでしたが、今や80代、90代の手術は普通に行われています。そうなると、高血圧や糖尿病をはじめ手術部位以外の疾患のある患者さんが多くなります。それに対していかに対応するか。そうしたことを麻酔科医が考えています。

このように縁の下の力持ち的存在でありながらも、短期間に病状を把握しながら、担当する患者さんの麻酔に関して、全責任を担うのが麻酔科医です。

麻酔の知識を痛み治療に活かす

手術で使う麻酔薬や神経ブロックなどについての知識を生かしながら、外来で痛みの治療をするのがペインクリニックです。一般的に鎮痛薬と言えば、消炎鎮痛薬を思い浮かべるかと思いますが、神経障害性痛の場合、普段は違う目的で使う薬、例えば抗うつ薬、抗痙攣薬などが治療の主になります。そのような薬剤を的確に使用し、いかに急性痛から慢性痛になるのを抑えるかが非常に重要です。

 

板橋病院の痛みセンターでは、各診療科の枠を超えて、ドクターが垣根なく患者さんを診て評価し、治療の方向性を探ります。そこで診断をして担当する科を決めて、患者さんを治療するわけです。ペインクリニックでは、そこで振り分けられた患者さんの治療も行っています。ペインクリニックが多く治療する慢性痛の場合、精神科や心療内科の診療が必要になるケースが少なくありません。その点、集学的なアプローチが実践される痛みセンターはその点でも十分対応できるようになっています。

難治性の痛みを治す

  • 日本大学医学部麻酔科

ペインクリニックでは、内科やその他の診療科で診てもらっても、結局何が原因か分からず痛みが続く場合や、神経障害性痛など難治性になりやすい痛みの治療を行っています。「最後の頼みの綱」と思って、ペインクリニックを受診される患者さんも多いです。いろんな医療施設を回っても痛みが取れないという患者さんに、いかに治療を立て直すことができるか、これが非常に重要です。

 

当病院のいいところは、自分の意向に沿わないと言って、すぐに別の病院に移る患者さんが非常に少ないことです。一度来られると、ある程度改善するまでは通院を続けてくださる。それは私たち医師、スタッフがしっかりと治療法を説明して、患者さんに納得してもらっているからだと思います。

幅が広がった薬物療法

麻酔薬は進歩し続けています。第一に麻酔薬や麻薬を含めて、副作用が減り安全に使用できるようになりました。さらに、短時間作用性の薬や拮抗薬も増え、麻酔科医にとっては非常に調節性があって使い勝手が良くなりました。昔は麻薬というと、一般の病院では麻薬中毒を懸念して使いませんでしたが、最近は麻薬取締法の規制に入らない弱オピオイドができて、普通の薬と同じように処方できるようになっています。

麻薬と同じような副作用に注意は必要ですが、麻薬は使いたくないという患者さんでも比較的受け入れてもらいやすくなっています。

治療目標を引き出す

慢性痛の場合、痛みがピタッと止まることは非常に難しいものです。慢性痛で来院される方には「完全に痛みをとることは期待しないでください」と説明しています。では、治療の目標は何かというと、痛みはありながらも、患者さんが日常生活で好きなことをできたり、家事がちゃんとできたり、あるいは動けるようになったりすることであって、痛みを完全になくすことではないということをはっきりとお伝えします。

もちろん痛みが取れるにこしたことはなく、私たち麻酔科医もそれを目指しますが、患者さんが何を望んでおられるのか、痛みが弱くなったら何がしたいのか、それを引き出してあげて、そこに喜びを持たせてあげるというのが非常に重要だと考えています。

癌診療に関わる各診療科・麻酔科・心療内科の医師、看護師、MSWで構成される緩和ケアチームで、痛みの治療を担当しています。緩和ケアチームは、月一回カンファレンスを開催し、患者さんにいかに良い緩和を提供できるか、検討を行っています。

緩和ケアは、関連の専門病院で学ぶことも可能です。