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第13回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble

第13回Anesthesia Morning Café Professor’s Bibble-Babbleは、下記の論文をご紹介します。

 

Phenylephrine impairs host defence mechanisms to infection: a combined laboratory study in mice and translational human study.

Stolk RF, et al.

Br J Anaesth 2021; 126: 652-664

 

皆さんはフェニレフリンを麻酔中の低血圧の対処に多用されると思います。α作用が主ですから、末梢血管の拡張による低血圧に有効であることは間違いありません。この論文で注意喚起しているのは、循環に関することではなく、

Important Point Here!!

フェニレフリンが免疫抑制作用を有する点です。手術侵襲により術後に免疫抑制状態が強度に生じると、肺炎や感染症などの術後合併症を招きます。手術の種類にもよりますが、侵襲度により免疫抑制程度も異なり、同時に投与されている麻酔薬や麻酔関連薬によっても免疫は様々な修飾を受けます。フェニレフリンは免疫を抑制する側にあるということを示した内容です。

 

研究は3つのパートに分かれています。

①ヒト白血球を大腸菌リポポリサッカライド(LPS)で刺激した際に増加するサイトカインが、フェニレフリン添加によってどうなるか?

②マウス腹膜炎モデル(LPS投与、大腸結紮+穿孔)でのフェニレフリン(30-50 μg/kg/min i.v.)の効果は?

③LPSを投与した健常男性におけるフェニレフリン(0.5 μg/kg/min i.v. 5時間)の効果は?

 

主要な結果をお示ししますが、

①のin vitro studyでは、フェニレフリンは向炎症性サイトカインであるTNF-αを75%減少させるのと同時に、抗炎症性サイトカインであるIL-10を93%増加させました。フェニレフリンとともにα1受容体拮抗薬のプラゾシン、α2受容体拮抗薬のヨヒンビンを作用させても、向炎症性サイトカインの減少と抗炎症性サイトカインの増加は同様に認められましたが、非選択性β受容体拮抗薬のプロプラノロールはサイトカイン変化を完全に抑制しました。

②フェニレフリン投与により、TNF-α、IL-1βなどは減少したのに対し、IL-10は有意に増加しました。

③ヒトにおいても同様の結果となりました。

 

つまりフェニレフリンは感染に対する防御反応を減弱させることが示され、その免疫抑制作用はβ受容体を介した作用であることが示されました。すでに手術時に感染状況にある腹膜炎手術や敗血症患者などの際には、その循環作用と免疫抑制作用を天秤にかけ、使用するか否かの選択をすべきかもしれません。この研究者たちは、以前にノルエピネフリンでも同様の結果を報告しています。

興味のある方は、ぜひ論文で詳細をお読みください。