第44回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble
今回も麻酔科専門医試験問題を解説してみます。試験前の先生方の参考になれば幸いです。
今回はNumber Needed to Treat(NNT)についての問題です。
これは聞いたことのない人には厳しい問題ですが、まずは解いてみましょう!
2024年度第63回麻酔科専門医試験問題
【63A2】number needed to treat について正しいのはどれか。
A p値とは関連しない。
B 信頼区間は対称性を示す。
C 連続データから計算される。
D 後ろ向き観察研究に基づく。
E number needed to harmの逆数である。
NNTについてはご存知でしょうか?日本語では「治療必要数」と訳され、私は痛み領域の論文で目にすることが多く、ペインクリニックの診療では鎮痛薬処方の際に参考にします。NNTとは、たとえば鎮痛薬の場合であれば「1人の患者で有効性を得るには何人の患者に投与する必要があるか?」といった意味合いになります。何を有効と定義するかで結果は変わってきますが、鎮痛薬であれば一般的に「服用前より30%あるいは50%痛みが軽減する」などと定義されることが多いと思います。下表は神経障害性疼痛に対するシステマティックレビューとメタ解析の結果ですが、真ん中くらいにNNTが示されています(Soliman N, Moisset X, Ferraro MC, et al. Pharmacotherapy and non-invasive neuromodulation for neuropathic pain: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol 2025; 24: 413-28)。これを見ると、α2δリガンド、つまりプレガバリンやミロガバリンなどの神経障害性疼痛治療薬のNNTは8.9ですので、9人に投与して初めて1人で有効性が得られる薬ということになります。それに対し、アミトリプチリンのような三環系抗うつ薬では4.6とより小さい値になっています。つまり5人に投与すれば1人は鎮痛されるのですから、三環系抗うつ薬の方が鎮痛に対する有効性が高いといえます。NNTは小さいほど効果が高いことを意味します。

一方、number needed to harm(NNH)は害必要数と訳されるとおり、何人の患者に投与すれば1人に有害事象が確認できるかを意味します。つまり安全性を比較する指標で、大きい値ほど忍容性が高いことを意味します。これも有害事象の定義により値は変化しますが、この研究では副作用による内服中止と定義しています。NNHは表の右端に記載がありますが、α2δリガンドでは26.2、三環系抗うつ薬では17.1ですので、薬を継続しやすいのはα2δリガンドと評価できます。ただし個々の症例で副作用の感じ方も異なり、すべての神経障害性疼痛の症例でα2δリガンドから開始するかというとそう簡単ではありません。痛みの性質や患者さんの並存疾患なども考慮した薬物選択がなされます。神経障害性疼痛の患者ではfirst-line drugsとして、上段のα2δリガンド(プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチン)、SNRI(デュロキセチン)、三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)が選択されることは覚えておきましょう。
NNTとNNHの意味合いはご理解いただけたと思います。さて統計関連の選択肢についてですが、この指標はランダム化前向き試験で得られます。鎮痛薬の場合は、プラセボと対象薬の比較試験が基になります。p値が適応される値ではなく、信頼区間は表で見ていただいても平均値を挟んで非対称です。この値は連続データ(身長や体重などの無限に細かく分割できる、たとえば55㎏、55.1㎏、55.01㎏・・・のような数値)ではなく、離数データ(物の個数のように1個,2個,3個・・・と飛び飛びの値、数える単位)から算出されます。
正解はAです。

