第47回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble
2024年度第63回麻酔科専門医試験問題の63A3です。今回は日々よく経験している脳神経麻酔に関する内容ですので楽勝でしょう!まずは下記の2問題を解いてみてください。
【63A3】頭蓋内圧亢進症患者の管理について正しいのはどれか。2つ選べ。
A 約30度の頭低位にする。
B マンニトールの投与を考慮する。
C 高用量の血管収縮薬の投与を避ける。
D 頭蓋内圧14mmHgでは早期に治療を開始する。
E 脳波モニター下であってもバルビツレートの投与を避ける。
【63A60】正しい組み合わせはどれか。2つ選べ。
A 亜酸化窒素 脳血流増加
B 亜酸化窒素 脳酸素消費量減少
C セボフルラン 脳酸素消費量増加
D デスフルラン 脳血管二酸化炭素反応性抑制
E プロポフォール 運動誘発電位抑制
まずは頭蓋内圧(ICP)に影響する因子のひとつであり、麻酔科医がコントロールできる脳血流(CBF)の基本的数値を覚えておきましょう。内容はMiller’s Anesthesia 10th ed.を参照しています。
CBF量は50mL/100g/分、脳の重量は約1500g、よって総量は750mL/分でCOの15%を占めます。酸素消費量は3mL/100g/分と高いため、この補充には高CBF量が必要になります。脳表面の灰白質に80%、内側の白質に20%が灌流しています。ご存知のとおり脳血流はautoregulation下にありますので、正常脳で平均動脈圧(MAP)が60-150mmHgにあれば脳血流は一定に制御されます。ただし高血圧の患者ではこの幅が右方移動していますし、個人差があることが示されており、臨床的には下限を70mmHgと思っておいた方が安全です。脳卒中や脳腫瘍など血液脳関門(BBB)が破壊されている部位では、autoregulationが機能せず、血圧依存性に増減することにも注意が必要です。
CBFは主にPaCO2により制御され、25-70mmHgの間では、1mmHgの変化で1-2mL/100g/分、直線的に増減します。過換気によりPaCO2を10mmHg下げたとすると、CBFは正常の50 mL/100g/分から30-40mL/100g/分に減少することになります。50mLから30mLと40%CBFが減少すると、脳波上burst suppressionが生じますので、意識下であれば脳虚血症状として意識レベルの低下や痙攣も起こるのではないでしょうか。通常、PaO2はCBFに影響しませんが、極度の低酸素<60mmHgになると急激にCBFは増加します。
吸入麻酔薬のCBFへの影響ですが、吸入麻酔薬は濃度依存性にCBFを増加します。ただし1MAC未満ならそれほど変化はなく、1MACを越えると脳血管が拡張し著明に増加します。静脈麻酔薬の中でCBFを増加させるのは交感神経刺激作用を有するケタミンのみです。バルビツレートやプロポフォールはCBFを減少させます。麻薬使用時もCBFは減少傾向となります。筋弛緩薬のロクロニウムは影響しませんが、サクシニルコリンは筋攣縮時に増加します。
吸入麻酔薬および静脈麻酔薬どちらでも、麻酔下では代謝率が下がりますので酸素消費量は減少します。またどちらの麻酔下であっても、CO2による血管反応性やautoregulationは影響されません。注意しなければならないのはガス麻酔薬の亜酸化窒素です。交感神経刺激作用によりCBFの増加とともに酸素消費量も増加します。
ニトログリセリンやカルシウム拮抗薬などの血管拡張薬は、直接脳血管を拡張させますのでCBFを増加させますが、MAPがautoregulation内の場合でのことであり、末梢血管拡張によりMAP<60mmHgを生じた場合には相殺されることになります。一方、血管収縮薬ですが、α1刺激が主作用であるフェニレフリン、ノルエピネフリンは直接的な脳血管への作用はありません。ただしMAPが上がり、autoregulation上限の150mmHgを越えるとCBFも増加し、とくにBBBが破壊されている術野ではその増加が大きくなるはずです。ICPが亢進している患者では低血圧は脳虚血を招くので避けなければなりませんが、過剰な高血圧もICPの上昇に繋がりますのでご注意ください。
体位のCBFへの影響は、MAPの変化に起因します。脳外科手術の場合、視野の確保や静脈血の頭蓋内からのドレナージのために、心臓の高さと比べるとやや頭高位になります。心臓より1インチ(約2.5cm)上がるごとにMAPは2mmHgずつ下がりますので、5インチ(12.5㎝)違えば、脳への還流圧(CPP=MAP-ICP)は体位のみで10mmHg減少することになります。脳底部のWillisの動脈輪の高さ、つまり外から見て外耳道の高さと中腋下線の距離で計算分の圧をMAPから引いて、CPPを推定する必要があります。あるいはAラインのトランスデューサの高さを外耳道の高さに合わせることもいいかもしれません。ICPを下げるために、15-30度、頭を挙げるとよいされています。逆に頭低位にすればCPPは増加します。
ICP(正常値:仰臥位で8-12mmHg)は脳実質とCBF、脳脊髄液により決まりますが、脳浮腫の場合、およそ>20mmHgで治療を要するようになります。浸透圧利尿薬が投与されますが、本薬は尿細管内の浸透圧を高く保つことによって、Na+と水の再吸収を抑制し、尿量を増加させます。30分以内に迅速に作用発現するマンニトールが麻酔科医にとっておなじみでしょう。グリセロールは作用のピークに1-2時間を要し、その分長く効果を発揮しますので、術後に1日2回程度、慢性投与されることが多いと思います。マンニトールの投与量は1g/㎏で、20%マンニトール液は20g/100mLの濃度ですから、60㎏の体重の方なら300mLを急速投与します。
MEPへの麻酔薬の影響ですが、Miller’s Anesthesia 10th ed.によると、振幅を減少させるものは吸入麻酔薬、亜酸化窒素、バルビツレート、プロポフォール、ミダゾラム、デクスメデトミジンで、影響のないものはケタミンとオピオイドです。プロポフォールもMEPに影響するのですが、吸入麻酔薬と比較してそのMEP抑制作用が少ないので、プロポフォールとオピオイド麻酔が選択されます。
正解は【63A3】B、C 【63A60】A、Eです。

