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第50回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble

2024年度第63回麻酔科専門医試験問題の63A34です。今回は悪性高熱症(MH)に関する問題です!

MHの発症頻度はおおよそ10万件に1-2件程度ですから、実際に経験した方は少ないと思います。私も直接対応したのはこれまでに1件のみです。しかし麻酔科専門医としては、MHの症状と対応は熟知しておく必要があります。まずは下記の問題を解いてみてください。問題文は簡約化しています。

 

【63A34】MHを疑う症状はどれか。3つ選べ。

A 筋硬直

B 赤褐色尿

C 呼気二酸化炭素分圧の増加

D 原因不明の徐脈

E 30分間に0.5℃の体温上昇

 

MHは常染色体優性遺伝で家族集積性のある遺伝性疾患であり、30歳以下の男性での発症が多く、MH素因者が存在します。素因者はそもそも骨格筋筋小胞体から細胞質内へのカルシウムイオン放出を担う1型リアノジン受容体(RYR1)の放出機構が亢進しており、全身麻酔にて吸入麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬に曝露することによりさらにカルシウムイオンが放出され、骨格筋の異常収縮(筋硬直)や代謝亢進による高熱(15分で0.5℃以上の体温上昇、40℃を越えることも稀ではなく、42℃を越えると神経細胞死が生じる)、呼吸性&代謝性アシドーシス、頻脈、不整脈、横紋筋融解による高カリウム血症、ミオグロビン尿症(赤褐色尿、コーラ色尿)とそれに起因する腎不全、DICなどにより死に至る可能性のある疾患で、死亡率は10%くらいと高率です。素因者を特定して、吸入麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬への曝露が回避できればいいのですが。。。遺伝子解析も進んでいて、RYR1やT細管上のジヒドロピリジン受容体の遺伝子変異をもとにしたスクリーニング方法も示唆されていますが、現状は術前の確定診断は現実的ではなく、発症時の備えは必須となります。

MHを疑ったら、すぐに吸入麻酔薬の使用を中止し、静脈麻酔等への切り替えをしながら、すぐに応援を呼び、術者にはMHの疑いがあることを伝え、手術の早期終了をお願いします。10L/分以上の純酸素にて過換気とし、応援医にダントロレンの溶解を指示します。1バイアルは20mgを蒸留水60mLで溶解し(やったらわかりますが非常に溶けにくく、蒸留水以外では溶けないので注意!数バイアルを迅速に溶かすのに人手が必要です)、できれば 2mg/kgを10分程度(急速投与は心停止の可能性あり)で投与することが推奨されています。呼気二酸化炭素分圧、体温が低下、筋硬直が改善するまで繰り返し、最大7mg/kgとされていますが、それ以上必要となるケースも存在します。並行して体温低下のために、冷却した生理食塩水の大量点滴や体表冷却に努め、38℃程度まで下がったところで中止します。高カリウム血症が生じていれば、グルコン酸カルシウムやGI療法、フロセミドによる利尿、代謝性アシドーシスには炭酸水素ナトリウム、不整脈時にはアミオダロンやβ遮断薬(カルシウム拮抗薬は使用しない。ダントロレンの併用で心停止の可能性があるため)で対処します。

症状が改善しても高率に再発(約6時間以内、ダントロレンの半減期は約10時間)するためICU管理とし、再発時はダントロレンを再投与する。

MHの確定診断は、カルシウム誘発性カルシウム放出速度の測定や遺伝子検査などですが、専門施設への相談が必要となります。

正解はA、B、Cです。