第54回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble
今回はがん性疼痛や慢性疼痛治療(がん性疼痛のみに適用されるのはヒドロモルフォンとメサドン)に用いるμオピオイド受容体作動薬として、弱オピオイドのコデイン、強オピオイドのモルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、フェンタニルの特徴について解説します。トラマドールとメサドンに関しては、オピオイドとしての作用以外にもSNRI作用あるいはNMDA受容体拮抗作用を有する薬物として、次の機会に紹介しようと思っています。
コデインは弱オピオイドのひとつであり、鎮痛効果はモルヒネの1/6-1/12です。コデインはプロドラッグであり、肝臓でCYP2D6により代謝され、下図のようにその代謝物の一部がモルヒネになり、その後グルクロン酸抱合を受けたモルヒネ-6-グルクロニド(M6G)が鎮痛作用を発揮します。弱オピオイドですので比較的弱い痛みに適用されますが、一日量としておよそ300㎎にて天井効果を示します。

モルヒネはコデインと同様、肝臓でのグルクロン酸抱合によりM6GとM3Gに代謝されます。M6Gが鎮痛効果を発揮し、M3Gには鎮痛効果はありません。M6G、M3Gともに腎から尿中に排泄されるため、腎機能障害患者では蓄積しやすく、M6Gによる過鎮静や呼吸抑制、M3Gによるミオクローヌスや痙攣のリスクがあるため、減量が必要です。

ヒドロモルフォンはモルヒネから半合成されたオピオイドで、モルヒネの5倍と強力な鎮痛効果を有します。主代謝物はヒドロモルフォン-3-グルクロニド(H3G)で、 モルヒネのような強力な活性代謝物を有しません。そのため腎機能障害患者でも比較的適用しやすいオピオイドです。
オキシコドンは初回通過効果(first-pass effect)の影響が少ないことから、経口バイオアベイラビリティはモルヒネの20-30%に比べ、60-90%と高いため、モルヒネの3/2、1.5倍の鎮痛効果を発揮します。オキシコドン自体が鎮痛作用を発揮するとともに、肝臓でCYP2D6による代謝物であるオキシモルフォンが鎮痛作用を有します。CYP3A4で代謝されたノルオキシコドンには薬理活性はありません。オキシコドンおよびオキシモルフォンは腎排泄のため、モルヒネよりは適用しやすいですが、腎機能障害患者では減量を考慮する必要があります。

フェンタニルですが、パッチ製剤(経皮吸収型貼付剤)が広く用いられています。それ以外にがん性疼痛では、突出痛対策にバッカル製剤(口腔粘膜吸収製剤)が使われています。もちろん注射薬もありますが、経口薬がないのはなぜでしょう?フェンタニルは消化管から吸収後、門脈を介して肝臓へ運ばれ、CYP3A4によって代謝され、不活性代謝物であるノルフェンタニルとなります。つまり初回通過効果が非常に大きく、経口投与時のバイオアベイラビリティが20~35%程度と低く、さらに個人差も大きいためです。パッチ製剤のバイオアベイラビリティは90%、バッカル製剤は50%となっています。代謝物のノルフェンタニルは尿中排泄されますが、活性がないため腎機能低下患者でも使用しやすくなっています。フェンタニルの利点として、便秘が他のオピオイドと比較して少ないと言われています。これはフェンタニルがμ1受容体に強く作用し、便秘を生ずるμ2受容体には結合が弱いことが起因すると考えられています。

それではペインクリニック専門医認定試験問題を問いてみましょう!
1.主にグルクロン酸抱合により代謝を受ける薬剤はどれか。2つ選べ。
a. モルヒネ
b. オキシコドン
c. フェンタニル
d. リン酸コデイン
e. ヒドロモルフォン
2. ヒドロモルフォンについて、正しいのはどれか。2つ選べ。
a. モルヒネより鎮痛効果が弱い
b. 半合成のオピオイド鎮痛薬である
c. 主にδオピオイド受容体に作用する
d. オピオイド鎮痛薬〔強度〕に分類される
e. 代謝産物のH-3-Gは強い鎮痛作用を有する
3.オピオイド鎮痛薬について、正しいのはどれか。2つ選べ。
a. フェンタニルは脂溶性が低い
b. モルヒネは肝代謝を受けない
c. ヒドロモルフォンは腎排泄されない
d. モルヒネの代謝産物には生理活性がある
e. トラマドールの代謝産物には鎮痛効果がある
4.オピオイド鎮痛薬の代謝経路について、正しい組み合わせを2つ選べ。
a.コデイン ―― CYP2D6
b.モルヒネ ―― CYP3A4
c.オキシコドン ―― CYP3A4
d.フェンタニル ―― CYP2D6
e.トラマドール ―― グルクロン酸抱合
【解答】 1. a, e 2.b, d 3.d, e 4.a, c

