第57回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble
2024年度第63回麻酔科専門医試験問題の63A44です。下記の問題を解いてみてください。単純な計算問題ですが、動的、静的コンプライアンスの区別を知っておく必要があります。
【63A44】一回換気量600mL、吸気時間1秒、PEEP 5cmH₂O、ピーク圧 25cmH₂O、プラトー圧15cmH₂Oのとき、動的肺コンプライアンス(mL/cmH₂O)はいくつか。
A 20
B 24
C 30
D 40
E 60
動的肺コンプライアンス(dynamic compliance:Cdyn)と静的肺コンプライアンス(static compliance: Cstat)ともに、肺(+胸郭)の膨らみやすさを表す指標ですが、気流がある状態(動的)か、気流が止まった状態(静的)かの違いになります。つまりCdynは換気中の気流が存在する状態、Cstatは吸気終末で一時的に気流を止めた状態で測定されます。
肺コンプライアンスは、ΔV (肺容量の変化)/ ΔP(気道内圧変化)で表され、値が大きいほど肺胸郭が膨らみやすいことを表しますが、動的、静的では下記のような式の違いがあります。
Cdyn = VT /(Ppeak − PEEP)
Cstat = VT /(Pplat − PEEP)
動的コンプライアンスが低下した場合、肺、胸郭が硬くなった以外に、気管支喘息などで気道抵抗が増加したなどの原因が考えられます。
静的コンプライアンスは気流がない状態での測定であり、気道抵抗は無視できるため、主に肺・胸郭の弾性特性を反映します。
つまり、この問題の計算式は、
Cdyn = 600 /(25 − 5)=30 mL/cmH₂O
因みに
Cstat = 600 /(15 − 5)=60 mL/cmH₂O
この問題では、Ppeakは25cmH₂Oとやや高いですが、Pplatは15 cmH₂Oと10 cmH₂Oの差があります。この解釈として肺が硬いというより、気道抵抗が高い可能性を示唆していると判断されます。たとえば、喘息や気道内分泌物、気管チューブの屈曲・閉塞などが想定されます。
PpeakとPplatの両方が上昇している場合には、肺・胸郭のコンプライアンス低下を生じるARDS、無気肺、気胸、腹腔内圧上昇などをチェックしましょう。
答えはCです。

