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新たなブログ再開!ー教授になった際の「志」

新規ブログを開始しました。医局員や当科に関心を持って下さる皆様に向けて、当科で沸いているいろんな話題、情報を発信していきたいと思っております。

まずは私、鈴木から教授になった際の「志」を忘れぬよう、以前Anet誌(2015;19(2):1)に載せていただいた巻頭言を添付しました。

医局員の皆さんに読んでいただき、私が怠けていると感じたら、すぐに叱咤してもらえたら幸甚です。今後も医局員の皆さんが麻酔科医として継続的に成長できるよう、安心して研修できるよう、健全な医局づくりを心がけます!

 

 

こころざし

「志を立てて 以て万事の源と為す」―これは幕末を生きた吉田松陰の句であり、何事にもまずは信念や目標を立てることが大切という意味である。この句に触れたのは昨年末、まだまだ熟さねばならぬ仕事に気を掛けながら、愚息の宿題の手伝いで世田谷にある松陰神社へ参拝したときのことであった。理系畑に居ることを建前に、全く歴史に触れてこなかったすぼらしい頭に自分でも呆れたが、ここに参る前には松陰先生が何を成し遂げられたのかうろ覚えであったほどだ。松陰は松下村塾で奇傑非常の人材育成のため教鞭を執っていたが、安政の大獄に連座した罪で若くして刑死された。12月と云えども日中は心地よい日差しがあり、まだ正月前のせいか境内には人も疎らで、気分転換の散策には好都合であった。参拝後、拝殿傍の塾を模した建物を見学していると「志」という文字が目に入った途端、立ち止まり、瞬時のうちに回想していた。人生に遭遇する幾多の局面で志は問われるはずであり、私が麻酔、ペインクリニック医を目指した頃の志はいかなるものだったろう。患者の周術期安全を守りたい、痛みから解放できるよう治療したい、もちろんその志は現在でも変化ない。しかし純粋にその思いを遂げるための熱意、新しい知見や技術獲得の努力は翳ってきていることは否めない。理想的な家庭を築き、子供達を一人前に育て上げようという志も立てたはず…雑務に気を取られながら此処に来ていることを息子はお見通しだろう…。志は年々増え、山のような志を背負いながらも、日常はそれを川に流し忘却し、時に拾い上げては想起することを繰り返している。教授が偉いとは思わないが、職位が上がるとそれに応じた任務や会議、雑務が増える。もちろん最も重要なのは医局マネジメントであり、医局員の先導、育成であることは認識している。現職を拝受した際、最新の志として「率先垂範」を掲げたが、瞬く間の1年で雑務に追われる中、医局員のために自ら動き、何かを具現化できたのだろうか…種々の事情で医局を離れる後輩も出る中、こんな不安も脳裏を過ぎった。麻酔科医のみでなく、研修医、学生の教育には、多忙を理由に臨床から離れるわけにはいかない。現在は週2日手術室責任者、1日ペインクリニック診療を担う中、医局運営や学部、学会の責務をも両立させようとすると自然と帰宅が遅くなり、休日も安息できない。ある部分、臨床から離れざるを得ないのかと考えることもある。しかし自分はまだ恵まれているに違いない。志を萎えさせてはいけない…拝観しながらふと我に返った。自分が出しゃばる隙も与えてくれない優秀な人材の輩出、畏れ多いがまさに松下村塾を目指せればと。この度購入した志守を自机の眼前に供え、志を誓う新年となった。