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第2回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble

今朝はカヌレを用意してみました。朝から甘いものはどうかと思いましたが、なかなか好評でした。

良かったです!

 

今日の Professor’s Wake-up Bibble-Babble は、

Ramadasan-Nair R, et al. Mitochondrial function in astrocytes is essential for normal emergence from anesthesia in mice. Anesthesiology 2019; 130: 423-34

 

Important Point Here !

吸入麻酔薬の麻酔機序としては、古くからMyer-Overtonのリポイド説(脂質に溶け込みやすいものほど麻酔力価が高い)や、タンパク、イオンチャネルへの作用(GABAA受容体やグリシン受容体といった抑制性経路の活性化、Na、Caチャネル、NMDA受容体、ニコチン性アセチルコリン受容体などの興奮性経路の抑制)に関するデータが出されていますが、この論文の研究チームは以前よりミトコンドリア機能との関連性について報告しています。中枢神経系において、グローバルにATP発生源であるミトコンドリア複合体Ⅰ(ニコチンアミドアデニンヌクレオチド脱水素酵素などの複合体)をノックアウトしたマウスモデルでは、イソフルランなどの吸入麻酔薬への感受性が上がり、コントロールマウスと比べると低濃度で麻酔が導入されることを発表していますが、今回は、アストロサイトにおいて限定的にミトコンドリア複合体Ⅰ遺伝子をノックアウトしたモデルを作成、研究しています。チャンバー内のイソフルランとハロタンの濃度を徐々に上げていき、tail clampや立ち直り反射(マウスを裏返しにしてもとに戻るか)を指標に、マウスが麻酔導入される濃度、そして濃度を薄くして覚醒する濃度を調べたところ、tail clamp評価時、コントロールマウスではイソフルラン1.27%程度で麻酔導入され、1.18%で覚醒しました。麻酔が導入されるか覚醒するかの濃度差は非常にわずかです。アストロサイトのミトコンドリア複合体Ⅰ遺伝子をノックアウトしたマウスでは、導入濃度はコントロールマウスと差はありませんが、覚醒濃度が0.67%と半減しました。つまり醒めにくいということです。興奮性シナプスにはアストロサイトが三つ組み構造の一部分として加わっていますが、アストロサイト内のミトコンドリアが吸入麻酔薬にて機能抑制されると、アストロサイトからのグリオトランスミッターであるATPやNMDA受容体を活性化する興奮性アミノ酸であるグルタミン酸、D-セリンの放出が阻害されたり、シナプス内でのグルタミン酸の回収やプレシナプスへの補充が阻害されたりすることで、麻酔が維持されていると推測されます。つまり吸入麻酔薬を中止し、アストロサイト内のミトコンドリアが正常化し、興奮性シナプスが活性化することで覚醒するという説明ができます。