第3回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble
今朝は近所でいろんなパンを購入してきました。コーヒーとの相性抜群ですね!
今月の Professor’s Wake-Up Bibble-Babble は、
Morphine exacerbates postfracture nociceptive sensitization, functional impairment, and microglial activation in mice. Li WW, et al. Anesthesiology 2019; 130: 292-308
です。
Important Point Here!!
オピオイドは外傷や術後に生じる痛み治療のmainstayですが、早期のオピオイド治療は患者にpoor outcomeをもたらす可能性が報告されています。たとえば筋骨格系の痛みの患者に、発症後12週以内にオピオイドが投与された場合、労働不能時間が長くなります。この結果には一部、opioid-induced hyperalgesiaが関与していることが推測されます。つまり痛み侵害刺激が加わっている際に、オピオイドに暴露させると、脊髄など中枢神経の感作が生じやすくなると考えられますが、機序が明らかにされていません。このレポートは術後の早期オピオイド投与が、どのような機序で脊髄の感作を生じさせるのかを報告しています。
マウスを骨折群(右脛骨骨折+ピンニング)とsham群に分け、それぞれに7日間モルヒネあるいは生食を投与しました。53日目までVon Frey testにてアロディニアの推移を観察し、経過途中で運動機能を評価しました。
① 骨折群は強度のアロディニアを呈しましたが、モルヒネを投与されたマウスの方がアロディニアからの回復が有意に遅れました。
② Sham群のモルヒネ投与マウスも、10日間程度、軽いアロディニアを呈しました。
③ 運動機能の回復も、モルヒネを投与されたマウスで有意に遅延しました。
④ 腰髄組織内のToll-like receptor4(TLR4:病原体を感知して自然免疫を作動させる受容体、その中でサブタイプ4はリポタンパクやウィルスへの応答タンパク)濃度を測定すると、骨折群で有意に増加していましたが、モルヒネ投与マウスでより増加しており、活性化したミクログリア(CNSにおける免疫担当細胞)上に一致して発現していました。
⑤ TLR4拮抗薬をモルヒネと同時に投与すると、アロディニアが減弱しました。
以上の結果を総合すると、術後7日間のモルヒネ投与は、脊髄での侵害刺激受容反応を強め、アロディニアや機能障害の遷延化を招きます。TLR4を介するミクログリアの活性化が関与していると考えられますが、ここを抑制することでオピオイドの副作用を減らせる可能性が示唆されました。