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第6回 Anesthesia Morning Café – Professor’s Wake-Up Bibble-Babble

 

引き続き家内お手製のジェラートパンとコーヒーでスタート!

本日のProfessor’s Wake-Up Bibble-Babbleは、前回に引き続き呼吸中枢の話です。前回は呼吸中枢のペースメーカーの存在位置として、延髄腹側部の後台形核も候補に挙がったことをお話ししました。今回は受容体レベルの内容で、神経型ニコチン性アセチルコリン受容体のうち、α4β2受容体の呼吸への関与を示した論文です。

 

Ren J, et al. Activating α4β2 nicotinic acetylcholine receptors alleviates fentanyl-induced respiratory depression in rats. Anesthesiology 2019; 130: 1017-31

 

Important Points Here!

呼吸抑制のないオピオイドが望まれるところですが、これはまだunmet needsであり、どうしてもオピオイドは呼吸中枢のμ受容体に作用して呼吸抑制を起こしてしまいます。そこで同様に呼吸中枢に存在するα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体を刺激することで、フェンタニルにより誘発される呼吸抑制を拮抗し、かつフェンタニルの鎮痛効果も高めることができるのです。

 

まずはラットの呼吸中枢を含む延髄のスライス標本を作製し、呼吸を促す神経発火をモニタリングしています。μ作動薬のDAMGOを作用させると神経発火頻度は著明に減少しますが、α4β2作動薬を作用させるとそれが拮抗されます。DAMGOとα4β2拮抗薬を作用させた後に、α4β2作動薬を投与しても発火頻度は拮抗されません。よってα4β2受容体刺激により、オピオイドによる呼吸抑制を拮抗できることが示されました。またラットのwhole body studyとして、プレチスモグラフィーで呼吸数を計測した結果では、フェンタニルの皮下投与で生じた呼吸抑制が、やはりα4β2作動薬により拮抗でき、同様にα4β2拮抗薬を投与しておくと拮抗できないという結果が得られています。鎮痛に関してのデータとしては、熱刺激に反応するpaw withdrawal latencyを評価していますが、当然のことながらフェンタニル投与により逃避反応までの潜時は伸びるのですが、α4β2作動薬を併用するとさらに有意に延長しました。またフォルマリンの後肢投与による疼痛誘発時には痛い部位を舐めたり、後肢を持ち上げたりといった防御反応を示しますが、フェンタニルの単独投与よりも、フェンタニルとα4β2作動薬の併用時の方が反応が減少しました。つまりα4β2刺激により、フェンタニルの呼吸抑制を拮抗できるばかりか、鎮痛効果も高められるという結果です。