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第8回 Anesthesia Morning Cafe

第8回Anesthesia Morning Café のProfessor’s Wake-Up Bibble-Babbleはこの論文を取り上げました。

Ten Hoope W, et al. Pharmacodynamics and pharmacokinetics of lidocaine in a rodent model of diabetic neuropathy. Anesthesiology 2018; 128: 609-19

 

Important Point Here!

 糖尿病患者の末梢神経は局所麻酔薬が効きやすい。「効きやすい」には、神経の局所麻酔薬への感受性が上がっており、同じ濃度なのに長く効く、薄い濃度でも十分効く(薬力学的因子)、神経からの局所麻酔薬の消失が遅く長く効く(薬物動態学的因子)の両方が含まれていることがこの研究で明らかになりました。

 

 臨床的に、糖尿病患者では局所麻酔薬の効果が遷延しやすいので、末梢神経ブロック時には、薬液濃度や投与量の調整、末梢神経障害などの合併症に留意しなければならないことは皆さんご存知でしょう。今回の論文は、糖尿病ラットを用い、神経のリドカインに対する感受性が上がっているのか、あるいは神経内のリドカイン濃度の減少が緩徐なのか、つまり薬力学的および薬物動態的変化の関与について調査しています。

 まずはin vivoで対照ラットと糖尿病ラットに、2%リドカイン0.2mlを用いた坐骨神経ブロックを行い、運動神経ブロックの効果時間を比較しました。その結果、糖尿病ラットで有意に運動神経ブロック時間が長くなりました。これはヒトでの神経ブロック遮断時間と同様の結果となります。

つぎにDixon up and down methodを用いてリドカインのED50を求め、比較しました。まず2%リドカイン0.2mlで坐骨神経ブロックを行い、運動神経遮断が生じた場合、次のラットではリドカイン濃度を0.2%下げ、運動神経遮断が生じなかった場合には0.2%上げてというように、運動神経ブロックの成否によって濃度を上げ下げしながら、検討頭数を重ねていくことにより、ED50を求めています。その結果、対照ラットでは1.4%、糖尿病ラットでは0.9%と、ED50に有意差が認められ、糖尿病ラットでは薄い濃度でも効果があることが確認されました。

 In vitro研究として、後根神経節領域を摘出し、神経刺激して脱分極波を計測すると、糖尿病ラットでは反応スパイク数の増加が観察されました。またパッチクランプ法により後根神経節のNaチャネル電流を測定していますが、対照ラットに比較し、Naチャネル電流の振幅は糖尿病ラットで大きいことがわかりました。これは糖尿病ラットではNaチャネルが増生し、神経が興奮しやすい状態になっていることが伺えます。濃度を変えて同部位にリドカインを作用させると、IC50は糖尿病ラットにおいて低値で、リドカインが効きやすい状態にあることがわかりました。不思議に思いませんか?なぜNaチャネルが増生し、神経が興奮しやすい状態であるのに、リドカインが効きやすいのでしょう?ここからはあくまで推測ですが、DRGで産生されたNaチャネルの末梢へのトランスポートが阻害されている、つまり末梢神経ランビエ絞輪部のNaチャネルは減少している可能性があります。あるいはNaチャネルを構成するサブユニットの変化により、チャネル数は増加しているものの、ひとつひとつの伝導性が低下し、リドカインが作用しやすいように変化していることが考えられます。加えて局所麻酔薬はuse(frequency)-dependent blockを呈しますので、神経発火、チャネル開放頻度が高いほど、チャネルブロックを起こしやすくなります。糖尿病ラットでは先に示したように神経脱分極頻度が高いので、遮断が起きやすいとも考えられます。この辺に関しては、この研究者たちが将来的に調査していくのではないでしょうか?結果を待ちましょう。

 あとは薬物動態学的検討結果ですが、14Cで標識したリドカインの神経内濃度の推移を比較すると、糖尿病ラットの神経内濃度減少が遅いことがわかりました。

結論として、糖尿病患者では、リドカインは薬力学的および薬物動態的に作用増強されると考えられます。

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